貧困など社会的援護を必要とする人々(主として子ども)が、新しい希望と信頼をもって自立し、 包み支え合う家族やコミュニティーを実現させていくように、教育的・福祉的援助を行っている、東京都認定のNPO法人です。
“アジア貧困地域の就学・生活支援活動のいま”について、HFI理事長の福井誠さんと事務局の佐々木美佳子さんにお話をお伺いいたしました。
■最貧困層へのアプローチ
――――HFIの活動は、最貧困家庭に対する支援を大事にされていると伺いましたが、どのような活動を行っているのでしょうか。
福井:現在、フィリピンもネパールもたくさんのNGOが支援に入っていますが、最貧困層にまでは支援が届いていないのが実情です。
特にネパールには、様々な国からの支援が入っていて、一部の人たちからは援助づけの国といわれることもありますが、実際には政治家の懐などに入ってしまい、支援者に届くまでには消えてなくなっています。そのため、私たちの活動では、貧困を自分たちの手で解決できることを目標に、最貧困層の人たちに直接アプローチするようにしています。
――――具体的にはどのような活動に注力されているのでしょうか。
福井:フィリピンでは、最貧困層の経済支援のひとつとして、ミシンプロジェクトを実施しています。
貧困地区には障がい児が多く、障がい児は犯罪に巻き込まれやすい傾向にあります。そこで、障がい児のお子さんと一緒にいながら、お母さんが働ける場所を提供するという取り組みです。
これまでも、マイクロファイナンスで、貧困家庭に安価でミシンを提供する仕組みはあったのですが、昨年の6月に作業場を開設しましたので、無料でミシンを利用できる環境が整いました。
ミシンプロジェクトでは、雑巾をつくって販売しています。雑巾といっても、“いらない古着から布切れをとって、それをミシンで縫っておわり”というシンプルなものです。基本的には使い捨てにされるものですが、1枚2.5円で販売できますので、生活費を稼ぐのに役立ててもらっています。
――――Webサイトでは、動物の支援活動を拝見したのですが、これはどのような活動なのでしょうか。
佐々木:現在、5つの農家でやっていますが、生後5か月の雌ヤギを育ててもらう活動です。ヤギは大きくなると約2ルピー(日本の価値でいうと15万円くらい)くらいで売れますので、一匹でも売れれば大きな収入になります。農家で育ててもらったヤギは、その家庭で自由にしてよいのですが、生まれた子ヤギは私たちに返してくださいとお願いしています。ヤギが増えれば、他の農家でも育てることができますし、販売して奨学金プログラムの資金にすることも可能です。
ただ、動物支援は非常に難しくて、これまでも、豚や鳥を提供したことがありましたが、大きくならないうち農家の方が食べてしまったり、売ってしまったりして、増やすところまでいきませんでした。ヤギの支援では、子どもが生まれるところまで成功していますので、今後の活動に期待しています。
やはり、“かわいそうだからお金をあげましょう”という支援だけだと、自分たちで貧困問題を解決しようという主体性をそぐことにもなりかねません。時間と手間はかかりますが、最終的には現地の人たちの力で自分たちのあり様を変えていけるような方向で支援していくことが大切だと考えています。
――――現地の状況を理解しなくては適切な支援はできないということですね。
福井:そうですね。ただ、私たちの活動も最初からうまくいったわけではありません。最初は支援金を送っても支援先からなんの報告ももらえず、誰がどのように使ったのか、誰もわからないという状況が続いて、なんども失敗しました。
海軍大将の山本五十六が「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」といっていますが、貧困層の支援では“やってみせ”というところで非常に時間がかかるものだと感じています。
以前も、この人なら信用できるだろうと思った青年に動物の飼育の仕方を教えて、現地で実践してもらったことがあったのですが、現地から送られてくる報告書がどうもおかしいと思って調査をしてみると、本人は都会に働きに行っていて、飼育はお父さんに任せていたということがありました。
また、就学支援のように個人に対する支援の場合、お金を送っても、自分の知り合いにお金をあげてしまって、本来の目的のために使われないということもあります。
支援金を預かって活動をしていますので、ほかに支援したい人がいれば、別途、申請する必要があるのですが、 “困っている人にお金をあげて、どこに問題があるのですか?”と言われることもありました。
ほんとうは、現地に日本人を送って、支援するのが確実で早いのですが、自分たちの問題を自分たちで解決できることを大切にしたいと考えていますので、できる限り現地の人に任せて、事業として成り立たせるようにしています。