ウガンダ・元子ども兵の社会復帰を願って③

インタビュー
小川真吾(おがわしんご)さん
特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス理事長
1975年和歌山県生まれ
学生時代、カルカッタでマザーテレサの臨終に遭遇したのをきっかけにマザーテレサのボランティア施設でボランティア活動に参加。国際協力やNGOの活動を本格的に始める。
大学卒業後は青年海外協力隊員としてハンガリーに派遣され、旧ユーゴ諸国とのスポーツを通じた平和親善活動などに取り組む。
帰国後、カナダ留学を経て国内のNGOでパキスタンでの緊急支援、アフガニスタンの復興支援活動などに従事。
2005年よりテラ・ルネッサンスのアフリカ駐在代表として、ウガンダ及びコンゴ民主化共和国における元子供兵社会復帰プロジェクトに取り組む。

■“オーナーシップ”と“オーダーメイド”

――――現在、ウガンダの支援施設の運営にはどのくらいの数の日本人が関わっているのでしょうか。

小川:ウガンダにはスタッフが15人おりますが、日本人スタッフは私を含めて2人しかいません。事務所を開設した当初から、5~10年後には施設の運営を現地スタッフに任せていきたいと考えていましたので、現在は、会計や日本語の報告書の作成など、最低限のことだけを私が担当して、ほかの仕事は現地スタッフに任せるようにしています。

特に、ウガンダの文化や風習については、私たち日本人スタッフにはわからないことも多いので、子どもたちの相談相手は、同じ文化を共有している現地スタッフの方が適していると考えています。

(ウガンダの事務所の様子)

―――――現地の文化や風習に合わせたプログラムを大切にされているのですね。

小川;そうですね。私たちは“オーナーシップ”といっていますが、現地スタッフには、自発的にアイデアを出して主体的に運営に参加してもらいたいと考えています。また、支援を受ける人たちに対しては、一人ひとりに合ったサポートをしていきたいと考えています。

元子ども兵の中には、10歳で誘拐されて1年ほどで保護される子どももいますが、5~10年と長期拘束されてから保護される子どももいます。また、女の子の場合、兵士と強制的に結婚させられて14、15歳くらいで出産させられることがありますが、このような場合、社会復帰は更に困難なものになります。一括りに元子ども兵といっても、状況は様々ですので一人ひとりにあわせた支援が必要です。

また、私たちの施設では、前半の18ヶ月は共通のカリキュラムで、基礎教育と、裁縫、装飾、木工手工芸などの集合訓練を行いますが、後半の18ヶ月はグループをつくってビジネスに取り組みます。そのため、実際にビジネスができているかどうか、ビジネスがうまくいかない場合、どのような見直しが必要なのかについても、個別にサポートする必要があります。

サポートされる子どもたちに対しては、“一人ひとりの心に寄り添ったオーダーメイドの支援となること”を理想としていて、活動を支える現地スタッフに対しては、“支援のやり方をしっかりと理解してもらって、オーナーシップを持って参加してもらうこと”を理想としています。

(木工大工訓練の様子)

■若者が自立できる社会を目指して

―――――今後の活動についてお聞かせください。

小川:現在はコロナによる感染症予防が注目されていますが、アフリカでは、コロナで亡くなる方の数十倍の人たちがマラリアや結核、腸チフスで亡くなっています。

実は私も8回ほどマラリアに感染しているのですが、マラリア(蚊)に刺されると、その日の夕方ころからマラリア原虫が血液の中で活動を始め、40℃くらいの熱が一週間ほど続きます。世界では、年間数十万人がマラリアで亡くなっていますが、犠牲者のうち、約45,000人がコンゴ民主共和国、約10,000人がウガンダの人たちです。

マラリアは本来、予防方法も治療薬も確立した病ですので、適切な処置ができれば死ぬことはほとんどありません。しかし、病院に連れていけなかったり、栄養状態が悪かったりすると死亡率は格段に上がってしまいます。現在、コロナ禍で社会や経済がなかなか動かないため、インフラが停滞しており、適切な治療が受けられない状態が続いています。

また、貧困から犯罪グループで活動する若者たちが増えているという問題があります。これは知識がなかったりやる気がなかったりという個人の問題ではなく、犯罪グループの中に入るしか生きるための選択肢がないという、子どもたちを取り巻く環境の中で起きていることを知って頂きたいと思います。 コロナに対する緊急支援も必要ですが、長期的に見ると、若者たちが仕事をして自立できる機会をもっと広げていきたいと考えています。

(コンゴ民主共和国の支援施設にて)
(コンゴ民主共和国の支援施設にて)

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