ウガンダ・元子ども兵の社会復帰を願って①

インタビュー
小川真吾(おがわしんご)さん
特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス理事長

1975年和歌山県生まれ
学生時代、カルカッタでマザーテレサの臨終に遭遇したのをきっかけにマザーテレサのボランティア施設でボランティア活動に参加。国際協力やNGOの活動を本格的に始める。
大学卒業後は青年海外協力隊員としてハンガリーに派遣され、旧ユーゴ諸国とのスポーツを通じた平和親善活動などに取り組む。
帰国後、カナダ留学を経て国内のNGOでパキスタンでの緊急支援、アフガニスタンの復興支援活動などに従事。
2005年よりテラ・ルネッサンスのアフリカ駐在代表として、ウガンダ及びコンゴ民主化共和国における元子供兵社会復帰プロジェクトに取り組む。

■アフリカでもっとも難民を抱えた国、ウガンダ。

――――テラ・ルネッサンスでは17年間にわたって、ウガンダで支援活動を展開されていますが、なぜ、ウガンダを選ばれたのでしょうか?

小川:まず、アフリカで子ども兵の問題が深刻な国を考えたときに、ウガンダ、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)、南スーダンが候補にあがりました。その中で最も問題が深刻な国がコンゴでしたので、まずは、コンゴでやりたいという思いがありました。しかし、コンゴがフランス語圏であることや、当時の組織の規模を考えたときに、まずは、ウガンダ北部から始めようということになりました。その後、隣国にも事務所を開設しましたので、現在では、ウガンダ、コンゴ、ブルンジの3国に事務所を開設しています。

(ウガンダの施設にて)
(コンゴ民主共和国の施設にて)

――――最初は何もない環境の中で活動を立ち上げられたと思いますが、当時の様子についてお教えください。

小川:ウガンダではグル県に事務所を開設しましたので、まずはグル県の行政機関とMOU(Memorandum of understanding (了解覚書))を交わして役割を分担するところから始まります。私たちの役割は、元子ども兵が社会復帰するための職業訓練や、その後の自立支援でしたので、受け入れ施設を用意したり、支援プログラムを開発したりして、少しずつ受け入れの準備を整えていきました。

――――なぜ、ウガンダには沢山の元子ども兵がいるのでしょうか。

小川:ウガンダでは、1986以降、紛争が始まり、1990年代半ばから政府軍と反政府武装勢力LRA(神の抵抗軍) との間に内戦が激化し、LRAは戦闘員を確保するために、子どもたちを誘拐して、 強制的に内戦に参加させたためです。この内戦は、2006年8月の停戦合意によって終結しますが、LRAは隣国のコンゴや中央アフリカに拠点を変えて、現在も活動しています。その間、子ども兵の開放についての協議もなされましたが、今も全員が解放されたわけではありません。

――――誘拐された子どもたちはどのようにして保護されるのでしょうか

小川:保護される子どもたちは、戦闘のどさくさに紛れて逃げてくるケースがほとんどです。皮肉な話ですが、停戦合意後、LRAは隣国に拠点を移しましたので、いまではウガンダに逃げ帰ることが非常に難しくなっています。

現在、コンゴには国連の平和維持軍が入っており、コンゴの村に逃げたところを保護されたりして、ウカガンダに移送される元子ども兵もいます。


■3年間の自立支援プログラム

――――保護された子ども兵はどのようなルートで支援施設に移されるのでしょうか。

ウガンダの政府機関にCPU(チャイルドプロテクションユニット)という軍が管轄する施設があり、保護された子ども兵たちは、ここに収容されます。元子ども兵といっても、LRAの一員として長期間戦闘に参加させられていますので、まずはCPU内で事情聴取を受け、その後、レセプションセンターに移されて、数週間のリハビリテーションを受けます。出身の村に帰ることができるのはその後ですが、実際には、身内が受け入れを拒むケースもあり、もとの村に戻ることが困難な場合もあります。現在では誘拐されてかなりの年月が経っている子どもが多く、戻ってくる元子ども兵のほとんどは20歳を超えています。そのため、もとの村に戻れたとしても、自立して生きていくことは非常に困難です。

また、私たちの施設では、3年間のプログラムを提供していますが、最初の 18ヶ月は通常 の学校のように月曜日~金曜日で職業訓練や読み書きそろばん、心のケアを行います。この期間は生活の糧を稼ぐことができませんので、私たちが衣食住を提供しています。後半の18ヶ月は、グループをつくって地元に近い場所でお店を開いて、自立するための準備を行います。

(ビジネス実習の様子)
(ビジネス実習の様子)

――――元子ども兵を受け入れることは大変なご苦労があると思いますが、特に配慮されていることがあればお教えください。

小川:元子ども兵が自立するには、故郷の人たちと和解して、もとのように受け入れてもらえるかどうかがポイントです。住民からすれば、誘拐されて強制的に戦闘に参加させられたとはいえ、自分の親戚や家族を殺した抵抗軍の兵士ですので、この関係を修復することは容易ではありません。

また、元子ども兵だけを支援すると、支援の格差がうまれるため、地域の最貧困層の人たちから嫉妬や妬みを買うこともあります。そのため、ここ10年間は元子ども兵だけでなく、地域の最貧困層の人たちの受け入れにも力を注いでいます。


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